2010年12月28日

イヴァン・クパーラ(1)

ズドラーストヴィーチェ!(こんにちは!)
カーク・ディラー?(ごきげんいかがですか?)

すっかりのご無沙汰、まことに申し訳ありませんもうやだ〜(悲しい顔)
さ〜〜て、まもなく今年も終わり、そしてもうすぐお正月、そしてそのあとは、いよいよクリスマスクリスマス

って、なにを言ってんの? お正月のあとにクリスマスだって??
またウオッカの飲み過ぎで、ついに頭がイカレたんじゃないかとお思いかもしれません。
いえ、だいじょうぶ。ウオッカは例の事件以来、一滴も飲んでおりませんし、まだなんとか脳も働いております。

実は、ロシアのクリスマスは、12月25日ではありません。
なんと、1月7日なんですね。

ご存じのかたもいると思いますが、ロシアのキリスト教は、ロシア正教です。
ロシア正教では、ユリウス暦という古〜い暦を使っていて、この暦でいうと、クリスマスの12月25日は現代の1月7日あたる、というわけなんですね〜〜。


さ〜て本題。
久しぶりの更新ということで、今回は満を持して、私ヤクーニンが最も愛するロシアン・ポップスのグループをご紹介したいと思います!

おや?
「あのさー、そんなイチオシなら、なんでもっと早く紹介しないわけ??」
という非難の声が聞こえてくるような…あせあせ(飛び散る汗)

実は、彼らの曲は、ふつーの日本人にとっては、ある意味特殊なので、ロシアン・ポップスにまだ免疫ができていないかたにいきなり紹介してしまうと、「な、な、なんじゃ、これ???」とあっという間にソッポを向かれてしまうおそれがあったからなんです。

でも、これまで当ブログをお読みいただいてきたみなさんには、アメリカン・ポップともユーロ・ポップともJポップとも全くちがうロシアン・ポップスに、すでに免疫ができていると思いますので、やっと今回ご紹介しようと考えた次第です。

パンパカパ〜〜〜ン!(古っ!)
で、そのグループとは…………………………………………………、

はい!
「イヴァン・クパーラ」
であります!!

これ、ロシア男性の名前のように聞こえるかもしれませんが、実はグループ名なんですね。
メンバーは、楽器演奏、曲のアレンジを担当する男性3人と、コーラス担当の女性4人。
名前の由来は、あとで説明することにして、まずは彼らの代表作のひとつをご紹介しましょう。

曲名は「カストラマー」
「カストラマー」というのは、ロシアのある地方の名前です。
自分たちの住む自然の恵み豊かな土地を、女領主にたとえて讃えた歌です。
たわいもない内容ですが、ま、とりあえず要約しますと、こんな感じです。
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こんにちわ、カストラマーさま! 何をしてるんです?
麻の花をしごいてるのよ

ああ、カストラマーさま、私の領主さま
ここには、ミルクのたっぷり入ったゼリーがある
チーズのたっぷり入ったクレープがある

こんにちわ、カストラマーさま! 何をしてるんです?
麻の糸を紡いでるのよ
ああ、神様! カストラマーさまをお助けください

こんにちわ、カストラマーさま! どうなさいました?
病気になってしまったの
ああ、カストラマーさま、どうか早くよくなってくださいな

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先にタネ明かしをしちゃいますと、この曲はロシアの伝統民族音楽(つまり、ロシア民謡です!)に、センス抜群の現代的なアレンジをほどこした曲です。

とにもかくにも、まずはこの「イヴァン・クパーラ」の代表曲を初体験していただきましょう。
なかには、確実に、
「な、な、なにこれ?!」
という、混乱と不安と驚きととまどいが涌き起こってくる方もいると思いますので、注意してご覧ください!
では、ど〜〜〜ぞっ!!



さ〜〜て、どうでしたか?

1995年当時、ロシアで彼らのデビュー・アルバムが発表されるやいなや、彼らは一部の若者を中心に、異常なくらい熱狂的に支持されたのでした。

ひとつには、若者にとってはただの古くさい民謡が(残念ながら、日本でも「民謡」なんて、若者、いや中高年でさえ、ほとんど見向きもしませんね)、彼らの現代的なアレンジのセンスでもって、超クールな音楽になってしまったからです。
しかも、従来のロシアン・ポップスとはまったくちがう旋律と響き、しかも魂をゆさぶる本質的なエネルギーに満ちあふれているからです。(クリップに登場する、ロシアのおばちゃんパワーがその源です! この偉大なるロシアのおばちゃんパワーについては、後日たっぷりご紹介します!)

この一見(一聴?)古くさ〜〜い、ダサ〜〜〜いと思っていた民謡が、絶妙のアレンジと現代的なリズムを彼らが付加したことで、非常に現代的な、そしてかつてどこにもなかった超ユニークでエキゾチックな、まったく新しいダンス・ミュージックに変容してしまったのです。

私ヤクーニンが、かつて極東ロシアのハバロフスクを訪れた夜、巨大なディスコに連れて行ってもらってドアを開けると、なんと彼らの曲が繰り返し繰り返し、超大音量でかかっていました。そして、その曲にあわせて、ブロンド青い眼・スタイル抜群・ダンス超ウマの、ティーンエイジャーのロシア女子たちが、熱気ムンムンに汗をまき散らしながら、ひしめくように狂喜乱舞していたのであります!(う、う、うっとり…。)

ロシア国内での人気のほどは、このクリップのYouTubeの再生回数(20万回を超えています!)を見てもわかっていただけると思います。

ところで、彼らがデビューした1995年は、ソビエトが一夜にして崩壊した1991年から数年後のこと。

ロシアの一般庶民の多くは、長い間自分たちをしいたげてきたソビエト=共産主義の崩壊をひそかに喜んだいっぽうで、子どものころから信じさせられていたものが突然なくなったことで、第二次大戦直後の日本人のように、心にぽっかりと穴が開いて放心状態になったのでした。
いったい、これから何を信じればいいのか…。

そんなとき、彼らが心のよりどころとして求めたもののひとつが、宗教、つまりロシア正教です。

旧ソ連、共産党の一党独裁の時代には、みなさんご存じのように、信仰の自由はありませんでした。
「共産党宣言」を書いた、かのマルクス大先生の歴史的なお言葉、「宗教はアヘンである!」を金科玉条に、革命後、旧ソ連共産党は、それまで「ロシア人の魂のよりどころ」であったこのロシア正教を全否定します。
そして、ロシア全土にあったロシア正教の教会(建物のてっぺんに、あの美しい金色のもっこりした丸っこいものがある教会)を、めっちゃっちゃくっちゃっちゃに破壊しつくしてしまいました。(ああ、もったいない!! 日本でいえば、明治時代の一時期、全国で数多くの仏閣がぶっ壊れされてしまった「廃仏毀釈」みたいなもんですね。)

しかし、ソビエト崩壊に伴って(というか、ゴルバチョフが大統領になってから徐々に)、それまで共産党によって表向きは厳しく禁止されていた宗教(ロシア正教)の信仰が自由になったことも手伝って、ロシア全土で、ロシア正教がいっせいに復権、国民全体にものすごい影響力を与えていきました。
自分たちはロシア人である、というアイデンティティ、このままでは精神的にバラバラになってしまうロシア民族を一つにまとめてくれる「最もロシア的なるもの」の象徴を、ロシア正教に求めたんですね。

このロシア正教の復権とともに、もうひとつ一般庶民が心のよりどころにしたのが、ロシアの伝統文化や民族文化です。
つまり、若者をふくめ、多くの人々に、伝統回帰への気持ちが一気に強まったのです。

ロシアの伝統音楽を扱った「イヴァン・クパーラ」の音楽が、若者の一部に熱狂的に支持されたのは、こんな背景もからんでいます。

 *

それでは、もう一曲、彼らの貴重なライブ映像をご覧いただきましょう!
曲名は「カリダー」

「カリダー」とは、いまもロシアの田舎などで、ロシアのクリスマスイブの夜中(1月6日の夜)に行われる伝統的風習の呼び名です。
村に住む若い男の子や女の子が、クマやウサギなどの動物に扮装して、手作りのお菓子をもって、村中の家をたずねてまわります。住民がドアを開けると、彼らは歌を唄ったりダンスを踊って、寒〜〜い寒〜〜い夜を徹して、一軒一軒にクリスマスのお祝いをして歩くのです。
なんか、ほのぼのってて、いい感じですね〜〜!
ちなみに、カリダーの風景はこんな感じ。

で、曲の内容はこんな感じです。
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白いしっぽのウサギちゃん、
テーブルに飛び乗って、砂糖の山をひとかじり
穴だらけのズボンから、細〜い灰色の足がのぞいてる

田舎の娘は美人ぞろい
だから道のそばにすわっちゃいけないよ
通りすがりの男にさらわれて、
売り飛ばされちゃうかもしれないよ

かわいいかわいいウサギちゃん
馬の格好の杖にまたがって、くねくね曲がった小川のそばを飛びはねる
穴だらけのズボンから、細〜い灰色の足がのぞいてる

田舎の娘は美人ぞろい
だから道のそばにすわっちゃいけないよ
緑の馬車に乗った商人にさらわれて、
100ルーブルで売り飛ばされちゃうかもしれないよ

ああ、カリダーが終わる明日の朝
やっとお肉が食べられる

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では、いってみましょう〜〜〜!
(おっとその前に。このクリップは個人撮影のようなので、ビデオのマイクが音を拾いすぎて、いきなり大音量で始まりますので、クリップを再生する前に、コンピュータの音量をちょっと下げておいたほうがいいです。で、音質もめちゃくちゃひずんでます。あしからず。)



どうです?
も、も、も、ものすごい迫力、も、も、も、ものすごいエネルギーですね〜〜!!
観客はちょっと高年齢層ですが、彼らのパフォーマンスに対する熱狂ぶりがかいま見られますね!

ちなみに、ロシア民謡の独特の歌唱法は、日本やその他の国のそれ、つまり、こぶしをコロコロ使うのではなくて、非常に直線的に、かつ鋭角的に、絶叫的に歌う点にあります。

また魅力的なのは、かわいらしい民族衣装に身を包んだ彼女たちのダンスのステップです。
ビデオを見てわかるように、長いスカートの下からちょこっとのぞいた足で、控えめながらこまめに足踏みして、きちんと正確なリズムをキープしている点です。
私ヤクーニンには、これが非常にセクシーに見えて、もうたまりません…!

ところで、この曲の歌詞の最後、「ああ、カリダーが終わる明日の朝 やっとお肉が食べられる」にちょっとご注目を。

実はロシア正教の敬虔な信者は(昔は一般庶民はみ〜んな!)、ロシア正教の教えにより、いまでもなんとクリスマスのだいたい一週間前から、体を清める意味で、肉食を断ちます!
だから、アメリカやヨーロッパや日本みたいに、クリスマスになると七面鳥やにわとりの巨大な丸焼きにむしゃぶりつく!ってことは、彼らにとっては信じられないことなんですね。

さて、次回も「イヴァン・クパーラ」の超刺激的な曲の数々をご紹介したいと思います。


では、みなさん、そして2010年さん、

ダスビダーニヤ〜〜!!(さようなら〜〜!)

そして、

イショー・ウビーディムシャ!!(またお会いしましょうねっexclamation×2

posted by クミートリー・ヤクーニン at 11:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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