2011年07月04日

<番外編>ロシアの家庭料理「ブリヌィ」

ズドラーストヴィーチェ!(こんにちは!)
カーク・ウ・ヴァース・ディラー?(ごきげんいかがですか〜?)

全世界の!(相変わらずずうずうしく出てます)「だれも知らないロシアン・ポップスの魅力」ブログ・ファンのみなさま!
またも、ながらく更新をサボっておりまして、イズヴィニーチェ!(すみません!)

さ〜〜て、以前「ボールシ(ボルシチ)」の作り方をご紹介したところ、意外にも全世界の数人もの多くのかたから「お、おいし〜〜い!」「ぜひ、別のロシア料理も紹介して!」との大反響がありました!
そんなわけで、今回は久しぶりに、またも特別編として、いざ!ロシアの代表的な家庭料理のレシピーを、ふたたび読者のみなさまだけに、こっそりと限定披露!したいと思います。

で、その名も、「ブリヌィ」!!

「ってさあ、いったい、なに、それ??」という声が、早速大きく聞こえてまいりました。
「ブリヌィ」というのは、いってみれば、ロシア風クレープのことであります。
(例によって、ロシア人たちはいとしさをこめて、「ブリンチキ」とも呼びます。)

といっても、ふだんみなさんが街角で立ち食いするような、アイスクリームたっぷり! ジャムたっぷり! 生クリーム+フルーツたっぷり! 「ふん、もうこの際、太ったってかまわないもんね〜的」豪華絢爛な高カロリーの、あの、もろアメリカン・スタイルのクレープとは微妙に雰囲気がちがいます。
まずその厚さ(というか、薄さ)が、あのアメリカン・タイプのクレープとはちがいます。

おいしいロシアの「ブリヌィ」は、太陽にかざすと完全に透けて見えるぐらい、薄い!です。
いわば、「見た目も味もひじょーにシンプルな、激薄ロシア風クレープ」というのがいちばん近いかもしれませんねん、亀はまんねん。

あーだこーだ説明するよりも、まずは最初に、美しい「ブリヌィ」の完成品をご覧いただきましょう。
ジャ、ジャ〜〜〜〜〜〜ン!

DSC01107.JPG


どうですか?
お、お、おいしそうですね〜〜っっっ!!
それに一見しただけで、「ブリヌィ」の極薄状態がおわかりになるのでは?(あまりに薄いので、はしっこの皮がめくれ上がってます!)

以前ご紹介した「ボールシ(日本語の一般名、ボルシチ)」と同様、この「ブリヌィ」は、ロシアの最もポピュラーな家庭料理のひとつといえます。

そのまんまではちみつやジャムをつけたり、チーズをくるんで、朝食やおやつとして食べるもよし。煮込んだ肉や野菜をくるんでちゃんとした一品料理として食べるもよし。
イクラやキャビア(う〜、ぜいたくぅ〜、食べた〜〜い!)を乗せたりくるんだりして、酒の肴として食べるもよし。
ロシアの人々は、いろんなバリエーションで「ブリヌィ」を楽しみます。

きわめてシンプルな料理、柔らかくて味もしつこくなく淡白なので、小さい子どもから、おじいちゃんおばあちゃんまで、だれにでもおいしく食べられます。(そして、「ボールシ」同様、二日酔いで「お、お、オエッ!」状態の男子女子にもうってつけです!)

そして、これまた例の「ボールシ」同様、「ブリヌィ」は、その家その家によって作り方も味つけも(そして、実は厚さも)さまざまです。
つまり、ロシアではまさに、「主婦の数だけ不倫がある!、じゃなくて、ブリヌィがある!」といっていいでしょう。

ことほどさように一般的な家庭料理なので、ロシアの偉大なる文豪たちの小説には、食事の場面などに、しばしばこの「ブリヌィ」が登場することになります。
でも、「ブリヌィ」を見たことも食べたことものない日本人には、そのまま「ブリヌィ」と訳してもまったく意味不明です。
んなわけで、訳者の苦肉の策として、「ロシア風薄餅」なんて訳されたこともあります。

たとえば、あのロシアの大文豪、ドストエフスキーの代表作で、久々の新訳として昨年売れに売れた亀山郁夫氏訳の『カラマーゾフの兄弟』ですが、そのなかにも、
「『さあ、話はこれぐらいにして、あの子の供養に行きましょうよ。あんまり気にせず、クレープを食べてくださいね。ずっとづついているよい習慣なんですから』アリョーシャは笑いながら言った。」(第5巻、P63)
といったくだりがでてきます。

ここで、「クレープ」と訳されているのが、はい。実は「ブリヌィ」なんですね。
亀山大先生も、そのまま「ブリヌィ」と訳しても一般の日本人にはわかるまい…と、悩みに悩んでこう訳されたのでしょう。


と、あいかわらずのうんちく的前置きはさておき、さっそくレシピーをご紹介しましょう!

ちなみに、前回同様、今回、ごくうま!「ブリヌィ」のレシピをご紹介いただいたのは、「ロシアの家庭料理を作らせたら、どれも絶品!」という、日本在住、料理上手のほんもののロシア人主婦(にせもんのロシア人ってどんなやつだ?)、ラリーサさんです。(スパシーヴァ(ありがとう)、ラリーサさん!! これからもどうぞよろしくお願いします!) 

★「ブリヌィ」レシピ


ところで、例によって、「ブリヌィ」にまつわるウンチクをひとつ…。

ロシアでは、毎年2月に「マースレニッツァ」というロシア正教のお祭り(キリスト教の「謝肉祭」にあたります)が行われます。
このお祭りは、ロシアの長〜く厳しい〜〜〜!冬がようやく終わりに近づいて、もうすぐ訪れる春を祝う大切なものなんです。そう、日本でいえば、旧暦の「立春」に、みんなで飲めや歌えの大騒ぎをするみたいな感じです。

でもって、「マースレニッツァ」の語源は、ロシア語のバター(マースラ)から来ているので、別名、「大バター祭り!」とも呼ばれていて、この日には、ロシア人は家族や友人みんなで、大量(ほんとに大量です!! 大皿に、高さ50cmにもなろうかというほど!あせあせ(飛び散る汗))のブリヌィを、ひたすら食べまくるのです。
「でも、なんでブリヌィなのさ?」
と、だれもが疑問に思うでしょう。(別に疑問に思わないでしょうが、単にもっとうんちくを聞いてもらうために、決めつけてますたらーっ(汗)

ご覧のように、ブリヌィは丸〜〜い形をしていますね。
つまり、ロシア人は、このブリヌィをぽかぽかと暖かな「お日さま」に見立て、それをとにかくたくさん食べることでからだにエネルギーをたっぷり取りこんで、健康を願うのです。
日本でも、十五夜に、丸〜〜い月を酒の杯に逆さに映し、これを飲み干して「不老長寿」を祈る、あの粋な風習に似ていると言えば似ているし、似てないと言えば似てないですね。(はっきりせい!)

また、「大バター祭り!」という別名にたがわず、ロシアの主婦やバブーリャたちは、ふつう、ブリヌィを一枚焼くごとに、その表面にバターを「これでもか! これでもか! え〜〜い、これでもまだ足りぬか!!」と塗りたくっては山のように積み重ねていきます。
(うわ〜〜っ! そんなことしてたら、当然、できあがるまでに何時間もかかりますね…)

しかしこれだと、「ダイエット志向かつインスタントラーメン大好き」のいまの日本人には、「カロリー、チョー高すぎ!」「脂分、チョー多すぎ!」「手間、チョーかかりすぎ!」という三重苦状態になります。
ラリーサさんも、そこら辺のことをよ〜くご存じ。
なわけで、このレシピーでは、あえて一枚一枚にバターは塗らず、お好みでちょこっとつけて食べるがよろし!としております。はい。

「ブリヌィ」を作るときってのは、当のロシア人にとっても最初の一枚には手こずるらしいです。極薄にする分量加減と火加減がむずかしいので、ロシアではこんなことわざがあるそうです。

 だれでも1枚目のブリヌィは失敗する。

つまり、なにごとも初めてのことはうまくいかないものだ。という意味です。
このことわざは、さらにこう続きます。

 2枚目のブリヌィは、近しい友人のために。
 3枚目は、遠い親戚に。
 4枚目は、自分に。


これは、そのまんまですね。
日本のことわざでいえば、「遠い親戚より近くの他人」。
つまり、いざという時は遠くに住んでいる親類より、近くの他人のほうが頼りになるということ!
手間のかかるブリヌィだけど、うまく焼けたら、まず最初は遠い親戚より、真っ先に、いつも自分たちを助けてくれる身近な親友に差し上げましょう。そして、もしまだブリヌィが残ってたら、最後に自分がいただきましょう、ということ。
つまり、ふつーのロシア人というのは、まず自分よりお世話になった他人のことを優先することが大事だ、と考えているんですね。
実はロシア人は、このように非常に日本人的でとても謙虚なんです。

それと、「ブリヌィ」はこれだけ極薄なので、特にロシアの田舎の大家族(10人20人は当たり前!)の主婦(あるいは、あのバブーリャ!)にとっては、一回作るだけで大変な手間と時間がかかります。3時間、4時間、コンロの前から離れずにブリヌィを作り続けるのは、当たり前なんですね。
なわけで、彼女たちはたとえば次のような歌を唄いながら、せっせとブリヌィを作ることになります。

はい! では、曲名もまさに「ブリヌィ」というロシア民謡(というより童謡)をご覧いただきましょう!(歌っているのはロシアの子供たち)

とりあえず、詞の内容はこちら。
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ブリヌィの材料はそろったし
お水も、きのう井戸からくんできた
わたしのブリヌィ、バターたっぷりのブリヌィ!

あとで、市場ですぐ作って売れるように
家で材料をかきまぜておきましょう
わたしのブリヌィ、バターたっぷりのブリヌィ!

いっしょうけんめい作ったのに どうしてだれも買ってくれないの?
そこへ豚さんがやってきて、くんくん匂いをかいでいる
わたしのブリヌィ、バターたっぷりのブリヌィ!

でもどうやら食べすぎて
おなかをこわしちゃったみたい
わたしのブリヌィ、バターたっぷりのブリヌィ!
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では今回は、おいし〜いブリヌィをほおばりながら、

ダスビダーニヤ〜〜!!(さようなら〜〜!)


posted by クミートリー・ヤクーニン at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | レシピ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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