お気に召したら、あとはこの基本量をもとに、ご家族の人数にあわせて、適宜、分量を増やしてくださいまし。
<材料>…繰り返しますが、ふつーの日本人のおとなだったら、ほぼ2人前!!
●小麦粉(薄力粉です! お間違えのないよう!)・・・約150g
●卵・・・2個
●牛乳・・・約50cc
●お水・・・約350cc
●サラダ油・・・大さじ約3杯
●塩・・・約4g(だいたい、ひとつまみ)
●砂糖・・・約15g
●バニラ・エッセンス(あれば)・・・適量
●直径約20cm程度のフライパン(できれば)
と、だいたい日本のどこの家庭にも、ふつー必ずあるはずのものばかりですから、思いたったいまからでも作れますね!
調理方法も超かんたんです。基本的にホットケーキを作るのと同じですから…。
<作り方>
@ まず、卵2個を割って、ボールのなかでよくかきまぜます。
A その間に、牛乳(約50cc)を、電子レンジかガスコンロで、さわると「あちッ!」と感じるくらいまで温めておきましょう。
B @のボールに、水(約350cc)を注ぎ、ふたたびよくかきまぜます。
C 次に、Aで熱々に温めておいた牛乳、塩(約4g=ひとつまみ)、砂糖(約15g)、小麦粉(約150g。薄力粉ですよ!!)、あればバニラ・エッセンス(お好みの量)、そしてサラダ油(大さじ約3杯)を一気に加えて、ダマがなくなるまでよ〜〜〜くかきまぜます。
※ ちなみに、この時点でサラダ油を加えるのが、ラリーサさんのすばらしいアイディアです。こうしておくと、(ホットケーキみたいに)ブリヌィを一枚一枚焼くたびに、いちいちフライパンにサラダ油をひく手間が省けるのだそうです。(拍手っ!!)
さ〜て、いよいよ加熱調理ですが、前述したように、フライパンは直径約20cm程度のものがベストです。
なぜかというと、それより大きいフライパンだと必然的にブリヌィも大きくなり、途中、ひっくり返すのがむずかしくなります。
それと、焼き上がったブリヌィが大きすぎて、みなさんの家にある大きな平皿でも、おそらくはみ出してしまうからです。
続けましょう。
D フライパンに、サラダ油を少量たらし、ティッシュなどで薄く引きのばして(最初の一枚目だけでOKですよ!)、中火(!)で、フライパンが熱くなるまで温めます。
※ なお、重要なポイントですが、ブリヌィの最後の一枚を焼き上げるまで、ガスの火は、ず〜〜〜〜っと、中火のままにしておいてください。赤子が泣いても、中火のままで続けます!(さもないとアンモナイト、ブリヌィの焼き上がり具合が変わってしまうからです!)
E フライパンが熱くなったら、Cの材料をお玉に約1杯ぐらいすくい、フライパンに投入しましょう。
※ここでの重要なポイントは、Cの材料をできるだけ少なめにフライパンに注ぐことです。ブリヌィは薄ければ薄いほどおいしいからです。フライパンの表面に材料が薄〜〜く均一に広がる程度がベストですね。1、2回試してみて、お使いのお玉で、だいたたいどれくらいが適量かを把握しておきまっしょう!
F ご覧のように、投入した材料が薄ければ薄いほど、10秒もたつと、ちっちゃーな気泡が一面に現れます。こんな感じであれば、完璧ですよ!
しばらくすると、はじっこがキツネ色になって、自然にうっすらめくれ上がってきます。
G そして、一面全体がこんな感じでほとんど乾燥してきたら、フライ返しでひっくり返します。
H あとは、逆面がある程度しっかり焼けたら、一枚目のできあがりです!!
逆面の焼きあがり具合は、こんな感じでOKです。
ところで、ブリヌィ一枚の薄さは、横から見るとだいたいこんな感じです。
うわ〜〜っ! 極薄ですね〜〜〜!!
これが、基本正統派「ブリヌィ」です!
I その後は、以上の作り方の連続です。とにかく薄いので、時間がかかります。
お好みの歌でも口ずさみながら、ボールの材料がなくなるまで、焦らず怒らず、ゆっくりリラックスして調理を楽しみましょう!
ちなみに、今回、日本人2人前用の材料でできあがったブリヌィは、最終的に14枚でした!
見た目には、こんな分量です。
もう一度、ブリヌィの極薄状態を横から見てみると……。
おもしろいのは、作りたてのブリヌィは硬い感じがしますが、時間が経つにつれて、だんだん柔らかくなっていきます。
ちょっと柔らかくなった温かいうちに、このブリヌィをいただくのがベストな食べ頃ですよ。
さ、さあ〜、召し上がれ!!!
<食べ方>
さ〜〜て、みなさんの台所でも、香ばしい匂いが薫り、思いっきり食欲をそそるブリヌィが無事できあがったと思います。
デザートとしての場合、ロシア人はふつー次のようなトッピングで、このブリヌィを食べます。
@(電子レンジなどでチンして、溶かした)熱々バター
A(電子レンジなどでチンして、溶かした)熱々はちみつ
Bジャム
Cコンデンスミルク
もちろんこれ以外にも、サワークリーム(覚えてますか〜〜? ロシア語で「スメタナ」といいます)や、生クリームや、とろっと溶かしたチーズと一緒に、あるいはヨーグルトをかけて食べてもおいしいですよ〜〜〜!
どうでもいいことですが、ふつーはブリヌィをご覧のように四つ折りにして、とがった先っちょを、溶かしたバターなり、溶かしたはちみつなりにつけて、そのままガブっといただくようです。(2度づけ、いや何度づけでもOK!)
実は、この熱々のバターにつけて食べるってところが、ロシア風なんですね〜。
たとえば、ロシアの文豪、ゴーゴリも『死せる魂』のなかで、こう書いてます。
「『ブリヌィはいかがですか?』女主人はいった。
それに応えるようにチチコフは、ブリヌィを三枚いっぺんに巻き、熱々の溶かしバターをつけて口に運び、ナプキンで唇と手を拭いた。」(沼野恭子訳・ゴーゴリ『死せる魂』より)
これだけ極薄だと、ロシア男にとっては、3枚一緒なんてのは当たり前です。
ついでにもうひとつ! 日本でも人気のあるチェーホフの短編から…。
「ブリヌィはこんがりいい色に焼けて、いくつもぷつぷつ穴があいており、商人の娘の肩のようにふっくらしていた……。ポドティキンは嬉しそうににっこりし、喜びのあまりしゃっくりをすると、熱いバターをブリヌィ一面に塗った。」
(沼野恭子訳・チェーホフ『無情について』より)
ちなみに、ラリーサさんの11歳の息子、ユーリ君は、しゃっくりはせず、ブリヌィをまず半分に折ったところで、最初はコンデンスミルクだけバージョン、次はジャムだけバージョン、最後はコンデンスミルクとジャムの両方を垂らした、いわゆる「だからいわねーこっちゃねー、アメリカ人大好き超高カロリー、あとでどんだけ太ったって知らねーからな!」バージョンを、バカ〜っと一気に口に放り込んで、さも満足そうに不気味な笑みを浮かべておりました…。
私もこの際。それぞれのトッピングで試させていただきましたが、どれも、「う、う、極うま〜〜〜!」でございました!